千本木です。
以前IEEE802.11gの製品で「無線LANルーターを新しくするだけで通信速度が早くなる?!」という記事を栗原が投稿しましたが、今回はそれほど古くないIEEE802.11ac対応製品をリプレイスするとどのようなメリットがあるかについて投稿したいと思います。
比較対象製品
変更前:NEC Aterm WG1200HS(2015年5月頃発売) 理論値867Mbps
http://www.aterm.jp/product/atermstation/product/warpstar/wg1200hs/
変更後:NEC Aterm WG1800HP3(2017年10月頃発売) 理論値1300Mbps
http://www.aterm.jp/product/atermstation/product/warpstar/wg1800hp3/
製品としての形状や基本性能はほぼ同等ですがIEEE802.11acのアンテナが2ストリームから3ストリームになったことで通信速度が向上しています。
また、WG1800HP3は1台の端末に集中して電波を飛ばすビームフォーミングに対応しているため速度向上が期待できます。
IEEE802.11acのメリットデメリット
IEEE802.11gは2.4GHz帯の周波数ですが、今最も速い規格のIEEE802.11acでは5GHz帯の周波数を使用しています。
5GHz帯を使用することで以下のメリットがあります。
- 2.4GHz帯はbluetoothや電子レンジが使っている周波数なので電波干渉が起こってしまうが、5GHz帯では安定して使える
※2.4GHz帯は近くで電子レンジが動作すると通信が不安定になります。 - 2.4GHz帯のIEEE802.11b/gが安価で普及が早かったため、他の無線LANとの電波干渉が発生してしまうが、5GHz帯は比較的空いている。
5GHz帯は以下のデメリットもあります。
- 電波の直進性が強いため2.4GHz帯に比べて障害物に弱い。
総じて5GHz帯のメリットが大きいので、IEEE802.11acを採用するべきだと思います。
アンテナの数
IEEE802.11acでは搭載するアンテナの数を多くすることにより速度を向上させることができます。MIMOと言います。
1アンテナあたりの速度が理論値433Mpbsで最大8アンテナで3467Mbpsまで向上します。
またアンテナ数とは別に帯域幅を2倍にすることでさらに上記の速度を2倍にできるので、IEEE802.11acでは8本のアンテナを使って帯域幅2倍にすると規格上の理論値は6933Mbpsまで向上することになります。
※以前栗原が投稿した画像です。
計測環境
それでは計測してみたいと思います。以下が私の計測環境です。
- 回線:auひかり(1Gbps) ※ネットワーク機器・LANケーブルは全てギガビット対応
- 計測端末:MacBook Pro 13インチ Early 2015(MIMO 3×3)
WG1200HS、WG1800HP3ともにブリッジモードに設定変更しています。
測定方法としてfast.comを使用しました。
各製品ともに設置場所、計測距離は同じで、3回ずつ計測しました。
計測結果
WG1200HS(変更前)
WG1800HP(変更後)
各々の平均値を計算すると1.4倍程度速くなりました。
アンテナが2本から1.5倍の3本になりましたので、おおむねアンテナ本数に比例した数値だといえます。
iPhone8でも計測してみた
MacBook Proだけでなく、手元にあったiPhone8でも計測してみました。
iPhone8はMIMO 2×2なので、理論的に言えばアンテナが増えても影響を受けません。
WG1200HS(変更前)
バラツキ感がありますが、おおむね300Mbps台と考えて良いでしょうか。
WG1800HP(変更後)
速くなりました。500Mbpsと出ているタイミングもありますが、大体490Mbpsくらいでしょうか。
iPhone8が速くなった理由
計測当初、何故MIMO 2×2のiPhone8の速度が向上したのか理解できませんでしたが、速くなった理由として考えられるはビームフォーミングだと思います。
NECが計測した各無線アクセスポイントの実効スループットを見てみると以下のようになります。
WG1200HP
アンテナ1本あたり:231Mbps
WG1800HP3
アンテナ1本あたり:280Mbps
単純計算ですがアンテナ1本あたりの速度が向上しています。
これはWG1200HPがビームフォーミングに非対応であるのに対し、WG1800HP3はビームフォーミングに対応しているためであり、結果的にiPhone8でも速度向上の恩恵を受けることができたと考えられます。
また、おそらくこのビームフォーミングによって通信の安定性が向上しました。
WG1200HSの時はアクセスポイントにギリギリ近付いて計測して下り400Mbpsに到達するかどうかで、数メートル離れると200Mbps程度まで落ちていましたが、WG1800HP3に変更後は5メートル程度離れていても400Mbps台を維持するようになりました。
まとめ
今回WG1200HSというそれほど古くない製品から新しい製品に乗り換えましたが、それでも速度向上や通信範囲の拡大というメリットを得ることができました。
また今回の機器では非対応ですが、MU-MIMOという複数機器で使用する際に速度が向上する仕組みが出てきていますので、複数機器を使用する場合には速度が向上するメリットがあります。
現代では様々なネットワーク機器が無線を使用しています。無線アクセスポイント1つでこれらの機器が使えなくなったり性能が左右されてしまうことを考えると、無線アクセスポイントの速度向上、通信範囲の拡大、通信の安定性は非常に重要な要素ではないでしょうか。
「とりあえず無線アクセスポイントがあって使えるから」ではなく、定期的に見直していきましょう。
今回は個人向け製品の話でしたが、弊社では法人向け製品の取り扱いもあり、無線アクセスポイントの導入に際して適切な調査やアドバイスを行っております。お困りの際は営業部まで是非お問い合わせください!