コロナ禍の影響もあり、最近テレワークを導入されたという企業様も多いのではないでしょうか。
テレワークの導入で気になるのは、やはり快適な通信環境でしょう。リモート接続を使用したテレワークや遠隔でのビデオ通話を使用したWEB会議など、高速な通信環境の用意は急務です。
そんな中、「PPPoE方式からIPoE方式に変更することによって高速なインターネットの利用が可能です、乗り換えはいかがでしょうか。」といった営業のお電話が来る場合があります。
「今より回線速度が早くなるならば…」と、藁にもすがる思いで乗り換えを検討される方もいらっしゃると思いますが、ちょっと待ってください。インターネット回線を検討し直すことはとても大切なことですが、乗り換え前に本当に乗り換えて問題が発生しないか確認をしていただくことが重要です。
今回はその注意点をいくつかご紹介いたします。
なお、今回はフレッツ光回線の環境における内容となります。
PPPoE方式とIPoE方式って何?
まず簡単にPPPoE方式とIPoE方式について簡単に説明します。
PPPoE方式というのは(Point-to-Point Protocol over Ethernet)の略称であり、いわゆる回線速度が遅い、と言われることが多いのはこちらの接続方式です。こちらはIPv4という通信規約のコンテンツにアクセスが可能です。
通信速度が遅くなってしまう仕組みとしては、PPPoE方式ではインターネットに接続する際に、ネットワーク終端装置というのを必ず通らなければならないのですが、この装置には通信容量に限界があります。アクセスが多くなりこの装置が混雑してくると、1アクセスに対して割ける通信量が少なくなってしまい、結果、通信速度が低下してしまうのです。
IPoE方式というのは、(Internet Protocol over Ethernet)の略称であり、PPPoE方式で出てきたネットワーク終端装置を使用していないことが特徴です。こちらはIPv6という通信規約のコンテンツにアクセスが可能です。また、PPPoE方式に比べ、より通信容量の大きい設備を使用することにより混雑が起きにくく、通信速度が低下しにくい接続方式です。
接続可能なコンテンツについて
コンテンツの話になりますが、IPv6という通信規約が登場してからそれなりに年数が経っているにも関わらず、いまだにIPv4のみに対応しているコンテンツは多くインターネット上に存在しています。また、新たに作られるコンテンツというのは基本的にIPv4とIPv6両方に対応しています。そのため、PPPoE接続であれば、コンテンツに対して不自由するという場面は基本ありませんが、IPoE接続の場合、アクセス可能なコンテンツが少ないという問題があるのです。
そんな状況を解決する技術として登場したのが、『IPv4 over IPv6』です。
『IPv4 over IPv6』とは、大まかに説明すると、IPv4のパケットを一度IPv6のパケットに変換してIPv6の仮想のトンネルを通過させようという技術です。
本来であれば、IPv4にのみ提供されているコンテンツへはIPoEからのアクセスは出来ません。そこで、IPv4パケットをIPv6パケットに変換し通信網を通過させ、トンネル通過後は改めてIPv4のパケットに変換しなおすことにより、IPoEであってもIPv4へのアクセスを可能としています。この技術のことを『トンネリング』といいます。
今現在、各プロバイダにて提供されている大体のサービスは、こちらの技術が用いられているため、IPv4のコンテンツに接続できないという状況はあまりありません。
IPoE方式を導入するために
IPoE方式について簡単に説明を行ったところで、導入に向けてどういった点を注意する必要があるか述べていきます。
まず現状のネットワーク環境を把握する
IPoE方式に切り替えるにあたって、まず今現在のネットワーク環境がどのような構成になっているのかを把握することが最優先事項となります。
例えば下記の項目を確認いただくことが必要です。
- ルータ/ファイアウォールはIPoE方式に対応しているかどうか
- ひかり電話を利用しているかどうか
- VPNを利用しているかどうか
- 自社サーバへ外部からアクセスがあるかどうか
- ポート開放の必要なネットワーク機器やアプリケーションがあるかどうか
これらはIPoE方式に切り替えた場合、影響を受けやすい箇所となるため、必ず設置、稼働状況を確認しましょう。
ルータ/ファイアウォールがIPoE方式に対応しているか?
今までPPPoE方式で運用していた環境をIPoE方式に切り替えるにあたり、現在使用しているルータ/ファイアウォールがIPoE方式に対応していることは大前提となります。まずは、ルータ/ファイアウォールの型番を確認し、メーカーのホームページで機器が対応をしているかどうか確認をしましょう。また、プロバイダのIPoE方式の接続サービスのサポートページにて対応しているルータ/ファイアウォールの一覧を公開していることもあるため、併せて確認をしてみてください。
もし対応していない機器の場合、プロバイダからレンタルされているルータならば、プロバイダに連絡をして機器の交換を依頼する必要があります。また、独自で購入したルータが非対応の機器であれば、新しくルータを購入する必要が出てきます。
実際に契約を結び、サービスの切り替えが終わった後に「ルータが対応していなかったからインターネットに接続ができない」とならないためにも事前の確認がとても大切です。
契約予定のサービスはポート開放が可能か?
IPoE方式の説明で『IPv4 over IPv6』とトンネリングについて触れましたが、使用されているトンネリングの方式によっては任意の番号のポートが開放できないことがあります。
簡単に説明しますと、トンネリング技術にもいくつか方式があり、共有IPを使用しているために自動で割り振られたポートしか使用できない場合や、そもそもポート開放が行えない場合もあります。
プロバイダやサービス毎によっても使用されている方式が異なっており、詳細を確認しなくてはどの方式が使用されているかもわかりません。この複雑さもIPoE方式導入のハードルを上げる要因となっています。
任意の番号のポートが開放できないということは、せっかくリモートワークの環境を改善するためにIPv6を導入したものの、
VPN接続ができなくなってしまったり、
社内サーバに外部からアクセスができなくなってしまったり、
今まで使用していたネットワークカメラが動作しなくなってしまったり、
と本末転倒なことになってしまう可能性があるのです。
対策として、一部のプロバイダが提供するIPv4の固定IPオプションを利用する方法があります。こちらのサービスを利用することにより、今まで通りのVPN環境であったり、任意の番号のポートを利用したネットワーク機器やアプリケーションの動作を保証することができます。
IPv4の固定IPオプションのデメリットとしてはオプションを付ける必要があるため、月額料金が通常よりも高いものとなってしまうことです。
以上のことから、社内の機器の対応状況や、プロバイダのプランやオプションなどをしっかり確認したうえでIPv6の導入を検討していただくことが重要となります。
まとめ
最近では、コロナ禍によるライフスタイルの変化により、インターネットトラフィックの世界的増加が話題となっており、日本でも時間帯等により変動はありますが、通信環境はかなり厳しい状況となってきています。そんな中、IPv6 IPoE方式を導入することによって、快適な通信環境を構築することができれば会社全体の生産性を高めることにもつながってくることでしょう。
しかしながら、導入を急ぐあまりに事前の検討、確認を怠ってしまえば、通信が行えないといった重大な問題が発生してしまったり、プロバイダ契約後に即解約をするといった問題が発生してしまうかもしれません。また、機器の設定が誤っていれば、せっかくサービスを変えたのに通信速度が全く変わらないという状況もあり得ます。
通信速度の問題によるストレスはかなり大きいものではありますが、そんなときこそ冷静に調査、検討を行いましょう。