皆様こんにちは、ネットワーク事業部の生方です。
先月の6/2に、関東地方の広範囲で雷などの影響による「瞬時電圧低下」が発生しました。
この影響により、東京ディズニーランド・ディズニーシーのアトラクションが自動停止してしまったため、ニュースで大きく報じられて印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
梅雨から本格的な夏に入るこの時期、雷・大雨・台風といった不安定な天候により停電などの電気に関する障害が増してきます。
電源に関するトラブルは我々の生活やビジネスに大きな影響を及ぼし、特にパソコンやファイルサーバなどではデータの消失や故障などのリスクが非常に高くなります。
大切なパソコンやデータを守るためにも、今回の記事では停電とその対策法について取り上げたいと思います。
「停電」にもいろいろある
今回の停電によるアトラクション停止報道の中で「瞬時電圧低下」というフレーズが見うけられましたが、実はいわゆる停電という現象にも様々な種類があるのをご存じでしょうか?
停電の種類としては,「瞬低(瞬時電圧低下)」「瞬停(瞬時停電)」「停電」の3種類があります。
現象 | 定義 |
瞬低 |
落雷などの影響により送電される電圧が一時的に低下する現象で、時間としては数十ミリ秒から2秒程度。 発電所からの送電線の途中で落雷などの事故が発生すると、電圧が一時的に低下します。自動で回復する場合もありますが、回復しない場合には送電線の途中にある遮断機で故障箇所を切り離すまで瞬低が継続します。 |
瞬停 (しゅんてい・瞬時停電) |
ごく短時間、送電が止まる現象。1分以内の停電。 上記の瞬低が発生し、遮断機によって故障箇所が切り離された場合に送電が止まります。その約1分後に自動的に遮断機が復旧し再送電が開始します。この再送電までの間の停電を「瞬停」と呼びます。 そのため、電力会社ではこの1分を超えない停電を瞬停と定義しています。 |
停電 |
1分を超えて送電が止まる現象。 上記の瞬停から復旧して再送電が始まった際に、再び電圧異常などの障害が見られた場合に、改めて送電が止められます。このように1分以上の長い時間送電が止まった場合に「停電」と定義されます。 |
このように、一般的には「停電」とひとくくりにされますが、実際には送電の状況によって細分化されています。
瞬停や停電であれば実際にパソコンや電気機器に影響が出る場合もありますので気づくことができますが、電圧が低下する瞬低程度だと、体感としては気付けない場合もありそうです。
ちなみに、外部からの送電は安定していても、大型の機械や大電力を消費するような電子機器を稼働させた場合に、その事業所内で他の機器へ供給する電圧が低下して瞬低・瞬停が発生するケースもあります。
では実際にどれぐらいの頻度で停電などが発生しているのでしょうか?
1つの施設に対しての全国平均で見ると、1分以上の停電は0.17回/年とされており、およそ7年に1回程度の頻度となります。しかし、瞬低は全国平均で3~6回/年、雷の多発地帯では10~20回/年発生するそうです。
そう考えると、月に1回以上は瞬低が発生しているということが推測されますから、日頃から電源トラブルへの対策が必要だとお分かりいただけるのではないでしょうか。
(参考:音羽電機工業株式会社 電源トラブル対策 瞬低対策 瞬時電圧低下補償装置)
弊社がある群馬県は全国でも特に雷が多い県として有名ですから、瞬低も平均水準より多いと見て間違いないでしょう。落雷への対策は、群馬県のような環境では必須となります。
瞬低・瞬停でパソコンは止まるのか?
では、実際のところ瞬低・瞬停といった障害はどの程度パソコンなどに影響するのでしょうか?
こちらの動画で、デスクトップパソコンで使用される電源ユニットを使用して瞬低や瞬停が発生した場合の影響について実験・解説されています。
これを見ますと、瞬低により平常時の70%程度の出力まで下がった場合にも25サイクル(東日本の50Hzの場合0.5秒)程度であれば電源出力には影響が無いようですが、それを超える電圧低下が起きたり、時間が伸びたりすると電源出力が止まってしまうようです。
また、瞬停の場合にも2サイクル(50Hzの場合0.04秒)といったごく短時間であれば影響が無いですが、それより長い時間だと電源が止まってしまいます。
これは、電源ユニット内にコンデンサという電気を蓄えておく装置が組み込まれていて、出力を安定させたり一時的に電力を供給する働きをしているためですが、過剰に大型のコンデンサを組み込むことは難しいため、ごく短時間の影響を回避するための装置だと考えるべきでしょう。
以上から、我々が体感できないような瞬間的な障害であれば影響が無さそうですが、少しでも変化に気づけるぐらいの障害となれば影響は免れないのではないかと思われます。
ノートパソコンならバッテリーのおかげで動作できますが、デスクトップパソコンであれば電源が落ちてしまうことは避けられないでしょう。
瞬低・瞬停・停電がパソコンへ及ぼす影響
では、もし瞬低・瞬停・停電などで突然パソコンの電源が落ちてしまった場合、どんな影響があるのでしょうか?
データの消失
ファイルを編集中に突然の停電によって電源が落ちた場合、保存されていないデータが失われるおそれがあります。
WordやExcelなどの場合は自動保存の機能によって復旧できる可能性もありますが、データが破損して正しく読み込めない可能性もあります。
非常に重要なファイルを編集中に停電などが発生し、必要なファイルが消失してしまったとなると業務に多大な影響を及ぼしてしまうかもしれません。
ハードウェアの損傷
電力の急激な停止や再供給が繰り返されると、ハードディスクや電源ユニットに物理的な損傷を与える可能性が高まり、パソコンが起動しなくなる可能性があります。
また、落雷の場合には停電の影響だけではなく、「サージ電圧」という現象が起きる可能性もあります。
サージ電圧とは、落雷などによって瞬間的に大きな電圧が発生する現象のことで、コンセントから通常よりも大きな電圧が電子機器にかかることによって、機器が故障する原因となります。
当然パソコンやネットワーク機器に対しても影響は大きいため、サージ電圧に対しての対策も重要となります。
ソフトウェアの不具合
突然の停電が発生すると、パソコンのシャットダウンが正常に行われず、OSやインストールされているソフトウェアのファイルが破損することがあります。これにより、システムの動作が不安定になったり、再インストールが必要になったりすることがあります。
瞬低・瞬停・停電への対策
このような電源のトラブルに対して有効なのが、UPS(無停電電源装置)の導入です。
(画像:APC社製 BR550S-JP 引用元商品ページ)
UPSは、瞬低や瞬停などが発生した場合に一時的に電力を供給する装置です。
機種によって出力容量が異なりますので、繋げておく機器の消費電力や停電の時間などによってどの程度の時間電気を供給できるかが変わってきますが、停電の間もつながっているパソコンなどをUPSのバッテリーで稼働させることができます。
その間にデータを保存したり正常にパソコンをシャットダウンすることができれば、データ消失や機器の故障といったリスクを回避することが可能です。
機種によってはファイルサーバやパソコンなどとの連動機能があり、停電が発生してUPSがバッテリー駆動に切り替わったことを検知して、連動設定した機器が自動的にシャットダウンを行います。
また、UPSにはサージ電圧に対しての保護機能を持つものが多くあります。
前述のように、雷によって発生したサージ電圧がコンセントから流入することで電子機器が故障する原因となりますが、コンセントと機器の間にUPSをはさんでおくことでサージ電圧による影響を防ぐこともできますので、特に雷の多いとされる群馬では重要な対策だと言えるでしょう。
加えて、ノートパソコンに関してはバッテリーを搭載しているために瞬低・瞬停の影響を受けにくいですが、サージ電圧に対してのリスクはデスクトップパソコンと変わりありません。
外部からの影響に対して社内の機器を保護するためにも、UPSの導入は有効となります。
個人向けの手頃な製品から、大容量の出力が可能な業務用まで幅広い種類が販売されておりますので、用途や接続台数などによって適切な機種を設置しておけばいざというときに安心です。
特にファイルサーバのように常時稼働させる必要があり、故障のリスクを可能な限り抑えたい機器にはUPSをセットで導入していただくことをお勧めいたします。
おわりに
ディズニーランドの件では、あらかじめ電源トラブルへの対策をしっかり備えておいたおかげでトラブルを最小限に抑えることができました。
もし全く対策をしていない状況であれば、最悪の場合人身事故に繋がるような問題が発生した可能性もあります。
パソコンやネットワーク機器の場合でも突発的な電源障害が発生すると、大切なデータが消失してしまったり、機器が故障してしまいパソコンが起動しない・インターネットへ繋がらないといった問題により、会社の業務継続に甚大な被害が及ぶことが考えられます。
そのような事態を避けるためにも、ぜひUPSなどの機器を導入していただき電源対策を見直してみてください。
弊社でもUPSの導入・設置のご相談を随時受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。